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 Last up date 2015/09/20

はじめに

ハスクバーナ・ゼノア社(旧コマツゼノア社)の " G260PUH " について取扱や調整について掲載しています。 記述内容についてはあくまで自己責任にて解釈して下さい。 また、ハスクバーナ・ゼノア社とは何ら関係はありませんので予め御承知下さい。


- 目次 -

■ G260PUHの概要
■ 機体への搭載
■ 始動方法
■ アイドリング
■ プラグ
■ 締め付けトルク
■ 2サイクルオイル
■ 混合比
■ 振動
■ カーボン
■ 焼き付き

■ 機体振動

■ トラブル事例

キャブレターの概要
■ ニードル調整のチェック
■ ニードル
■ ダイヤフラム
■ インシュレーター
■ サーボリンク
■ スロットルバルブ







G260PUH
G260PUHの概要

排気量26cc空冷2サイクル単気筒エンジンで燃料は混合ガソリンです。 同社のチェーンソー等の農林用小型エンジンと同様の仕様で、RCヘリ用に一部変更されています。 他に船舶・カー・飛行機用のエンジンがありますが、基本スペックは大きく変わりません。 カー用以外のエンジンは操縦者と距離を取るので、ある程度のノイズ対策が施されていますがどれもそのままでは不十分な場合が多いようです。 グローエンジンと比べ最も違うと感じるのは振動で、大きなトルクと引換になった振動発生が課題です。 しかしながらこのサイズのエンジンとしては高性能エンジンであり、日本が世界に誇る逸品であることも事実で、海外のガスパワーエンジンの多くがこの会社の製品を使用しています。

排気量は23ccから26ccへと変更されてトルクの増大が計られており、現在はオプションで29ccへの拡大も可能です。 しかし、排気量の増大と共に発熱量が増えていかにクーリング機能を確保するかがポイントになります。 また、大きくなったトルクで発生振動も大きくなってしまい、微細振動を嫌う空撮に使用する場合には排気量の選択がポイントになります。 
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機体への搭載

G260PUHを機体に搭載して使用するとケースの固定部分にひび割れが生じてしまうことがあります。 このひび割れはエンジン振動から機体振動となり、延いては高回転域でのバラツキに陥ってしまいます。 全ての機体で現れる症状ではありませんが少なくとも私のエンジンは100%ひび割れしています。 
搭載方法として取扱説明書には固定位置がアルミマウントプレートに4箇所、クランクケースに2箇所が指定されており、プレートは一見肉厚に見えますが、それでもこの症状を見る限りは剛性が不足しています。 また、同時に機体フレームもやや剛性不足です。 
対策はケースに設けられている固定用の穴5箇所を出来るだけ使って組み上げ時の剛性をアップさせます。 最低3箇所、出来れば4箇所固定できると大幅に剛性アップが図られて振動がある程度押さえられます。 事実、GSR260Zにモデルチェンジ以降はプレートは更に肉厚になりケース固定は3箇所に増設されました。 またこの対策がひび割れ防止になるかどうかは長期テストが必要です。

実際に搭載する際は次の点にも留意します。 
  ・クラッチシューとベルが前後左右均等に組み合わされている
  ・バックラッシュが適正である
クラッチシューとベルは機体に対して中心軸を直角にし、組み付け時にシューとベルが何処から見ても同じ出っ張りになっていればOKです。 またペイロードが何時もかかっているような機体は次第にフレームが歪み、ここの部分が均一にならないのでフレームにパッキンを噛ませてバランスを取ります。
バックラッシュはメーカーでは0.2mmのクリアランスを設定しています。 コピー用紙を2つ折りにすると0.17mmになり、これをピニオン・ドライブギアの隙間に噛ませると1.3mmの振幅の歯形が出来るので、これくらいの噛み合いで且つ空回しでスムーズな状態がベストです。 
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始動方法

6角HEXスターターとリコイルスターターを使う方法がありますが、ここではリコイルスターターを使う方法を説明します。 重要なことは2つで燃料がシリンダーまで届いている事と磁石の位置が適正である事です。
  1. ポンピングでキャブに燃料を充填する
  2. チョークをする
  3. ゆっくりノブを引きやや強く反発が来るまで繰り返す (燃料をシリンダー内に送る)
  4. チョークを戻す
  5. ノブを強く反発する少し手前の位置からクイックに引き始動させる (磁石の位置を合わせて始動)
調整が良い場合はこれで始動しますが、かからない場合はニードルや電気系統をチェックします。 
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アイドリング

一般的なガソリン2サイクルエンジンと同様にアイドル運転は極力避けます。 シンプルな構造な為、様々な回転域での燃焼管理が出来ず、設定した回転領域以下では不完全燃焼しやすくなります。 取扱説明書にはアイドルは3,000回転とありますが、10,000回転前後での使用を想定しているので、それ以外の回転数での使用は出来るだけ短くします。 実際に暖機・冷機運転をする際はクラッチが繋がらない範囲での高回転、おおよそ5,000回転で時間は3分程度に留めてカーボン発生を軽減させます。 よくエンジンをアイドル状態にしてメカ類の調整をする場合がありますが、危険ですし繰り返し行うとカーボンによるエンジントラブルを招きます。 

夏と冬ではアイドリングの開度を変えます。 夏よりも冬は開けてアイドリング回転数を一定にしたり始動性を保ちます。 アイドリング回転数の設定はキャブのスクリューネジよりもプロポのスロットルトリムを使用します。 ローターが回転中でも設定できるので暖機・冷機運転の際に便利で安全です。
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プラグ

●指定プラグの意味
G260PUHにはChampionのRZ7Cが標準指定されています。 取扱説明書を見ると船舶等にはNGKのCMR7Hが使用可能ですが、空物にはその設定がなく、RZ7C以外は使ってはいけないと言う表現になっています。 RZ7CとCMR7Hの違いは抵抗値で次の通りです。
 RZ7C・・・・・15kΩ~30kΩ
 CMR7H・・・10kΩ 
抵抗値が少ないと着火性は上がるもののノイズが増えるので、周辺電波環境に悪影響を及ぼします。 勿論、プロポ電波も例外ではなく、長距離通信を行う空物ではノイズにより通信距離の低下を招きます。 その為、抵抗値の多いRZ7Cが指定プラグとなっています。 しかし、あまり高い抵抗は失火し易く振動の原因ともなり考えもので、経験上お勧め出来るのは10~15KΩでしょうか。 それでも受信機やアンテナの配置が近い場合にはノイズの影響を受けてしまいます。 

●寿命
一般的にプラグの交換は20,000kmが交換目安ですが、これをG260PUHに当てはめた場合には25時間になります。 しかし、実際にはそれよりもっと早く消耗していて10時間に満たない場合もあります。 これはプラグの個体差もありますがエンジンの使用回転数や燃焼温度が影響して寿命が短くなり、交換サイクルを早くする必要があります。 また、この場合はプラグギャップ等よりも抵抗値の変化によりその寿命を知ることが多くなります。

●プラグの点検タイミング
これはプラグの寿命の点検ではなく、ニードル調整の善し悪しを見るタイミングの事です。 プラグの焼け具合でニードル調整の方向を決めるのでプラグが焼けていなければなりません。 エンジンが稼働最中に見るのがベストですが不可能なので、「十分なフライト後に着陸して即座にエンジンを停止した状態」で点検しましょう。 着陸後にアイドリングするとはエンジンには優しいのですが、プラグの状態が変わり点検の意味がなくなってしまいます。

●フラッシュオーバー
経路の抵抗が高い為にスパーク電流がプラグの外側を走る現象で、周辺のゴムが粉砕してスス状のモノでプラグが汚れるので気づきます。 多くがキャップの接触不良が原因ですが、プラグ動作不良でも発生する場合があります。 
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締め付けトルク

ボルトを締め込む際にトルク表現が多用されていますが、正確な整備の為に欠かせない数値です。 例えばプラグの締め付けトルクは"110kg・cm"となっていて、これは図のような強さのチカラで締めるよう定められています。 距離と質量の掛け算なのでこのほかにも無限に組み合わせはあります。 このようにボルトの締め付け時は規定トルクを意識して締めないと、ユルイ場合は部品が脱落しキツイ場合はナメってしまうのでトルクレンチや秤を持ち出さずとも、数値は意識する事が必要です。
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2サイクルオイル

2サイクルオイルは、その製法分類で植物油、化学合成油、部分合成油などがあり次のような特長があります。
カーボンの生成が少ないことから化学合成油がお勧めです。 価格は部分合成油に比べ1リットル当たり2,500円前後と高価ですがピストンヘッドやマフラーの定期的な清掃が少なくなります。 
また、製法と同時に重要なのがオイル粘度で、粘度は潤滑性と比例する傾向があります。 しかし粘度が高いとガソリンとの親和性が悪くなり不完全燃焼を起こすようになります。 一般的にレース品質のオイルは粘度が高く、気温が低いと排気から墨汁のようなタールを出すようになります。 このような場合は粘度の低いオイルを使うと次第に改善します。 

ゼノアエンジンはカタログによりJASO規格FDが指定されています。 JASO規格にはFB,FC,FDがあり、その違いは清浄性と排気閉塞性です。 FD規格が高潤滑性を示すものではないようですが、合成オイル化等により結果としてFD規格のモノは高い潤滑性を持つものが多くなります。 現在、ゼノアから販売されている2サイクルオイルはFCとFDがあり、購入の際は留意が必要です。

簡単なオイルの選択法をご紹介致します。 先ず夏用オイルはバイク用でFD規格の内、街乗り用のモノを選びます。 品質こそレース用のものが良いものの、粘度が高過ぎて最適な混合比の設定が難しくなります。 次に冬用ですが、同じくバイク用でFD規格の内、缶を振って最もシャバシャバしているものがお勧めです。 よく量販店売っているモノでは、Castrol POWER1 2T が良いと思います。 但し、Castrol はカーボン発生が少し多いですが、ゼノア純正よりは少ないです。

焼き付きを防ぐために高性能なレース用オイルを使用してもあまり効果はありません。 焼き付きはエンジンの冷却不足や薄いニードル設定が原因なので、オイルは現在市販されているバイク用オイルであれば、それが原因になることはありません。
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混合比

G260PUHにゼノア純正オイルを使用する場合は40:1と定められています。 ゼノア純正オイル等の部分合成油に対して100%化学合成油(全合成油)等のグレードの高いオイルを40:1で使用するとややオイル過多の症状になります。 このような場合は混合比を薄目の方向に変えます。 混合比は薄ければ薄いほど完全燃焼し易くなるので良いのですが、同時に潤滑性が悪くなるので見極めが必要です。 

  ゼノア純正オイル (部分合成油)   40 : 1
  Castrol POWER1 2T (全合成油)  50 : 1 

この2つはほぼ同じ潤滑性を示します。 他の高性能オイルを使うと60、70と希釈して使用可能かも知れませんが、試験を必ず行わなければなりません。 また、100:1等の希釈可能な農林業向けのオイルがありますが、使用を避けることをお奨めします。 2輪用は常用回転域が10,000は普通ですが、農林業向けオイルの想定回転域はずっと低く、10,000回転以上の連続稼動試験も行っているかどうか判りません。 
尚、ゼノア純正オイルはこれらの回転試験を実施されているようです。

同じオイル・混合比率でニードルを適正に保ちながら四季を通して使っていると、エンジン内部は冬はオイル分が多く、夏はやや少な目な状態を示します。 これはニードルによって燃料の増減に比例してオイルも増減しますが、実際は燃料のように比例しないと言うことになります。 その為、夏より冬は僅かに混合比を薄くした方が良い状態になります。
次の比率は私が行なっている混合比の1例です。

  気温20度 混合比50:1
  気温 0度 混合比54:1
 ※全合成油を使用
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振動

エンジンが原因で異常振動が発生する場合は次の箇所をチェックします。
 ・ シリンダーの分解組上を行った場合は芯が出ているか
 ・ クランクケースが割れていないか
 ・ クランクシャフトが摩耗により編芯していないか

シリンダーの組み上げでケースに固定する際、ずれて固定すると振動が発生します。 出来るだけピストンの軸とシリンダーの軸が一致するよう心がけて組み上げます。
クランクケース割れはエンジンを機体フレームに固定する際に剛性不足となりますので、固定ボルトを出来るだけ増やします。 最低3箇所は固定して下さい。
クランクシャフトは新品時にはありませんが、相当程度の時間を稼動すると摩耗により編芯する場合があります。 このような場合はエンジン全体が劣化しているはずなので新品エンジンに交換します。
この他に濃い目のニードル調整でも振動が出ますが"異常振動"と呼ぶほどは振動しませんし、排気煙が多いので解ります。
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カーボン

黒いスス状或いは炭状のモノで燃焼室内やマフラーに発生します。 稼動時間に応じてカーボンの蓄積が増えて来ますが、減る事はまずありません。
 ニードル設定や高品質オイルの使用でその発生を低減させる事は可能ですがゼロには出来ません。 
少々の発生では問題ありませんが、蓄積量が多くなり硬質カーボンによってシリンダーをキズつける場合が出てくるので、そうなる前にカーボン除去が必要になります。 除去するには専用の薬剤・洗剤が必要なので苦手な方はメーカーメンテナンスに出しましょう。
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焼き付き

エンジンが稼働中に停止するのが「焼き付き」、停止しないまでも吹けなくなるのが「抱き付き」で、その原因は潤滑不足です。 
潤滑不足になる原因は次の場合です。
  1、 高負荷の稼働
  2、 希釈燃焼(薄いニードル設定)
高負荷での稼働は同じ回転数であっても沢山のガソリンを消費しているので発熱量が大きくなっています。 経験では気圧1015hPa・気温25℃・ペイロード4kg程度の飛行ではシリンダーヘッドの温度は150℃前後です。 しかし、高負荷での飛行で焼き付いた事は有りません。 理由はペイロード過多は焼き付く以前に安定した飛行が得られず飛行出来ないからです。
焼き付きの原因の殆どは希釈燃焼です。 もっとも、ユーザーが意図的に焼き付く程の薄いニードル設定をする訳が無く、「さっきまで絶好調で飛んでいたのになんで」と言うのが多い筈です。 これは季節が変わり気温が低くなって行く時期、つまり夏から冬に向かって行く際に起こります。 理由は当HPのキャブレターの記述をよく読まれ空燃費を理解されると解るかと思います。

 「焼き付きは寒い時期こそ要注意」
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Walbro  WT-643 / WT-644
キャブレターの概要

キャブレターはピストンの動きに連動して、空気とガソリンとが混ざりあった"混合気"をエンジン内に送り込みます。 空気14.7gとガソリン1gの比率で混合気が作られると"理想空燃費"として過不足なく燃焼します。 理想空燃費より空気が多いと"薄い"や"リーン"と表現し、ガソリンが多いと"濃い"や"リッチ"と表現します。 調整はこの理想空燃費を目指しますが、2サイクルエンジンは混合気が薄いと焼き付きやすくなるので、それより僅かに濃い状態に調整します。

G260PUHに標準添付されているキャブレターで今のところ Walbro社(ウォルブローが正式)のキャブレターが使われています。 ダイヤフラム式で薄いシートがピストンの動く際の空気圧力を利用して、燃料をタンクから吸ったり溜め込んだりするのを制御する方式です。 シンプルな部品構成で整備性に富んでいますが、ダイヤフラムと呼ばれる部品は熱による変形があり、動作不安定に陥りやすいのが欠点です。 また、気温や気圧の変化に敏感でこまめなニードル調整を必要とし、不十分な調整は焼き付きや振動を招き易くなります。 しかし、G260PUHの高性能を十二分に引き出す部品として欠かせない部品でもあります。
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ニードル調整のチェック

ニードル調整が適正かどうかは、次の箇所を見て濃い薄いを判断しています。 

●最初の始動性
文字通り機体を準備して最初の始動のかかり易さです。 エンジンが常温の時はどんなモノでもかかり難くなるのですが、その中でも良い調整は一発で始動します。 この場合、薄いよりも濃い方がかかり易くなります。
●暖機後の排気煙の濃さ
常温始動後に3分程度クラッチが繋がりきる5,000rpm前後の回転数で暖機して、その時の排気煙の濃さを見ます。 よくタバコの煙に例えますがそれでは少し濃くて、寒いときに"フーッ"と吐いた時に息が白くなりますがその際の感じが一番良い例えです。
●テールの横振動
ニードル調整が濃くなると出始めます。 濃い燃焼ガスは不完全燃焼し易くなり、その際のトルク変動でテールが"ブルッブルッ"と不定期に振動します。 調整が薄いと出なくなります。
●ホバリング時のプロポのスロットル値
ニードルが適正に調整され風速が同じであれば割と一定値になります。以下に例を示します。
 ・風速3m/s、気温20℃、湿度60% → スロットルポジション35%
 ・風速3m/s、気温15℃、湿度90% → スロットルポジション35%
調整がうまく行ったときはこうなることが多いようですが、同じスロットル値になるようにニードルをいじる訳ではありません。 夏と冬では5%~10%程度スロットルポジションが移動します。 (夏場の方がスロットル値が多くなります) 
●エンジンの再始動性
調整結果が的確に判断出来る方法です。 着陸直後、即座にチョーク無しで再始動を試み、調整が薄い時エンジンの再始動性が悪くなり、逆に調整が濃い目の時は再始動性はバツグンです。

以上のチェック箇所を総合的に見て調整が濃いのか薄いのか判断します。
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ニードル

ニードルはキャブレターの燃料吐出孔の栓の役割をするモノでネジ状になっています。 ネジを回して栓を開閉し燃料吐出量を変えることで理想空燃費になるよう調整します。 似た機能にアイドルスクリューがありますが、アイドルスクリューは空気と燃料を、ニードルは燃料のみを調整します。

理想空燃費は空気、つまりキャブ内を通過する酸素量に対して燃料の吐出量を調整します。 キャブを通過する酸素は気温が高い日や気圧が低い日は、空気中の単位体積当たりの酸素量が少なくなるので、燃料の吐出量も少なくします。 反対に気温が低い日や気圧が高い日は、単位体積当たりの酸素量が多くなるので、燃料の吐出量も多くします。 

ニードルは熱対策として調整する事はありません。 濃い目の調整をする事でガソリンで燃焼室内を冷やす事は可能ですが、不完全燃焼が多くなりテール横振動が増えて、操縦安定性に影響が出てしまいます。 熱対策はニードルではなく冷却ファン等の外的な工夫で解決します。

機体重量・ペイロードが変わるとニードル調整を変える考えがありますが、理論的には排気量は変わらないので理想空燃費も変わらずニードル調整も変わりません。 但し、燃料の吐出量が変わりますので発熱量が上がり、燃焼室内はオイルが足りないような状態に見える事があります。 この場合はニードルを開けるのではなく、高温高負荷に向いている粘度の高いオイルを使うことで解決します。

G260PUHにはニードルが2種類あり低回転域用の"Loニードル"、高回転域用の"Hiニードル"となっています。 Loはアイドリングからホバリング辺りまで、Hiはホバリングから高速・上昇の領域の燃料吐出をコントロールします。 
Lo・Hiの吐出イメージを図にしました。 Loはスロットル開度に比例して吐出量が増え、ある地点で増加が止まり一定になります。(吐出の上限に達する) Hiはその少し手前から吐出し始めます。 調整の方向性としては先ず低回転域をLoで調整し、次に実際にホバリングしてHiを調整します。 一度バランスが取れたら以後、Hi・Loの両方を同量開閉する事で微調整します。 

実際にニードルを調整する際に重要なのがピストンヘッドの状態です。 図はホバリング後、即時停止してシリンダーヘッドから見たピストンヘッドのイメージですが、左が薄い状態で右が濃い状態です。 G260PUHをメーカー出荷・純正オイル・気温20度で使用すると3、4番辺りの状態になりますが、焼き付きの心配が少ない濃い目の設定です。 但し、失火の可能性も高くテール横振動が気になる方は2番を目指しますが、同時に焼け気味の1番の状態に近づく為より注意が必要です。 

            



調整の参考としてメーカーが行った試験環境を示します。(推測を含む)
  気温 ・・・・・・・・・・・・・・・ 20℃
  ニードル ・・・・・・・・・・・・ Lo 1:10 開け、 Hi 1:30 開け
  使用オイル ・・・・・・・・・・ ゼノアビックバンガソリン (ゼノア2サイクルオイル40:1と同等)
  ピストンの状態 ・・・・・・・ 色イメージ 3~4番
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ダイヤフラム

ウォルブローのWTシリーズは燃料吸入と貯留をエンジン負圧を利用したダイヤフラムと言う部品で行っています。 ダイヤフラムは薄いパーツを何枚か組み合わせた構造で、加熱や経年で劣化しますが当たり外れも多い部品です。 ダイヤフラムが消耗した場合の症状ですが、最も多いのはアイドルの不安定で、周期的に回転数が上下するので留意していると気づきます。 アイドルの不安定は燃料の劣化でも生じますが、こちらの場合は鮮度の良い混合油を使用すると改善します。 
写真はチェーンソー屋さんから買って来たものですが一部違うものの、共通部品も多いので緊急に必要になった場合はそちらで購入しています。
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インシュレーター

キャブレターをエンジンに固定し、同時にエンジンの圧力をキャブレターに通す部品です。 硬い樹脂で出来ていますがエンジンの熱が繰り返し加わり徐々に劣化・変形します。 新品時でも締め付けを考慮してかやや湾曲している場合もありますが、劣化が進行するとエンジンとの隙間が生じてそこから空気が入るようになります。 この時の症状は初期段階では希釈燃焼で回転上昇し、進行すると燃料不足でエンジンストップに至ります。 特に熱の入りきる飛行中に症状が出やすくなります。 整備でキャブレターを外した場合はインシュレーターの歪みも確認して下さい。 金属のスリーブが飛び出ている場合はその兆候なので、紙ヤスリで平らにすると再使用可能ですが、この場合はスリーブのネジ山までが再利用限界の目安です。
写真は使用するにつれて変形したインシュレーターですが、片側のスリーブが飛び出しているのが解ります。 対策品としてアルミで出来たインシュレーターが流通しているので検討するのも良いでしょう。

インシュレーターの両側にはガスケットが使用されていますが、黒く金属粉の入ったようなモノは変形時を意識してか、潰れやすくほぼ再利用は出来ません。 交換用のモノが無くインシュレーターを外してしまった場合は無理をして再利用せず、一時的に厚紙等を使って間に合わせた方が安全です。 型取りした厚紙にシリコングリスを薄く塗布すると機密性が上がります。


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サーボリンク

スロットルのシャフトとサーボを繋ぐユニバーサルリンクは、振動の多い部分のリンクなのでやや硬めに仕上げがちです。 甘いと振動でリンクがスッポ抜けるかも知れませんから。 しかし、振動の為、硬めのリンクはスロットルシャフトに無理がかかり、シャフトが削れます。 写真の赤い部分に金色の金属粉がある場合はそれです。 リンクを甘くすると改善する筈ですが、結構甘くしても削れます。 リンクがスライドし始める状態が目安です。

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スロットルバルブ

スロットルバルブは下部のスプリングで絶えず下方に押しつけるチカラがかかっていますが、振動でボディとバルブの接地面が次第に荒れて、スムーズに動かなくなる場合があります。 写真の赤い部分がそうですがホバリング等細かく操作する位置で起こるのでギクシャクした飛行になります。 このような場合は細目のヤスリ等で該当個所を摺って上げると改善します。 尚、バルブをシャフトに固定する際に上手くネジをカシメられる場合は良いのですが、そうでない場合は耐熱性を持ったロック剤を必ず使用します。
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その他
機体振動

機体振動が気になる場合は先ずエンジン振動に目が行きますが、エンジンが問題な事はあまりありません。 試しにエンジン単体で回すと電気シェーバーのように微振動で12,000rpmをクリアします。 この微震動以上の振動はエンジン以外から発生していて、場所はフレーム、クラッチ、マスト、ローターが原因です。 
次は私の組み上げ方法です。
フレーム
フレームは完全に平行・直角のとれた箱状態に組み上げます。 組み上げには必ずノギス・分度器等を使います。
クラッチシュー
ダイヤルゲージで誤差を0.02~0.05mmに納まるまで何度も組み直します。
クラッチベル
クラッチシューとクラッチベルが完全に平行になるようノギスで計測しながら組み上げます。 ここで完全な平行がとれない場合はフレームが歪んでいるので組み直します。
マスト
マストはローター無しで回転させて先端がほぼ偏芯せずに回ることを確認します。 墜落等の衝撃が加わると多かれ少なかれ偏芯するのでその場合は新品に交換します。
ローター
メーカーの指示通りバランスを取りますが、最初からバランスの良いメーカーの物を使用します。 材質はカーボン製が良いです。

すべてがしっかり組み上がればガソリンエンジンながら電動機のように飛んでくれるはずです。 ただし、飛行時間を重ねるにつれてフレームが金属疲労により徐々に歪んでくるので、クラッチベルとクラッチシューの平行が取れなくなり機体振動が出始めます。 これを防止するためには予めフレーム補強をすると効果があります。
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トラブル事例
                  症状

エンジンがかかりにくい

アイドリング不安定


高回転域で回転を保持しにくい領域がある


飛行中のエンスト

焼き付き・抱き付き

シリンダーヘッドの温度が150℃以上

クランクケースひび割れ

キャブレーター上部に金粉

エンジン内部に黒い粒(G260PUH1)

スロットルシャフト折れ

プラグ・キャップが黒く汚れる

マフラーから粒状のオイル又は墨汁のようなものが出る

アルミマフラーにヒビが入る

アルミマフラーの遮蔽板溶接が剥がれる

クラッチベルとシューが左右方向で傾いている

赤リード/黒アース線の断線・ちぎれ
                  原因

ニードル設定が薄い/電気系統の接触不良

ダイヤフラムの劣化/古い混合燃料/インシュレーター・ガスケットの取付不良・劣化/ピストンリング不良

マフラーの詰まり/クランクケース割れ
キャブボディとバタフライバルブの削れ

ニードルが薄い/インシュレーター・ガスケットの取付不良・劣化

ニードル設定が薄い

ニードル設定が薄い/ペイロード過多

機体のねじれ、振動による損傷

ユニバーサルリンクが硬い

アルミの網がクリーナーケースを削る

ユニバーサルリンクが硬い/プロポでのエンジン停止

振動等による接触不良・面積不足/製品不良

気温に対して2サイクルオイルの粘度が高い

機体のねじれ、振動による損傷

機体のねじれによる損傷、又は製品不良

ペイロード過多/ロア・アッパーフレームの歪み・剛性不足

コードのぶらつきによる損傷

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